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愛知県市町村、財政力指数ランキングを考察。尾張と三河、地方で比較すると差はあるのか。

まず、財政力指数とは、日本の地方自治体(市町村や都道府県)の財政力を示す指標で、その自治体がどれだけ自主財源(主に地方税など)で必要な財源を賄えているかを評価するために使われる指標。

財政力指数の値は一般に 1.0 を基準とする。財政力指数が1.0以上であれば、その自治体が基準財政需要額を自主財源で全て賄える状態を示しており、通常、地方交付税交付金を受け取らない「不交付団体」となる。財政力指数が1.0未満であれば、基準財政需要額を自主財源だけでは賄えない状態を示しており、地方交付税交付金によって不足分を補う「交付団体」となる。

財政力指数は、自治体の財政状況を示す重要な指標であり、自治体間の財政力の比較や、地方交付税の配分を決定する際に使用される。

愛知県は、全国的に見ても財政状況が良好な自治体が多いとされている。しかし、この記事では「愛知県の自治体は財政的に余裕がある」という一般的な見方にとどまらず、県内で財政が厳しい自治体はどこにあるのか、地域ごとに財政状況に差があるのかといった点を掘り下げる。

CONTENTS

愛知県市町村 財政力指数ランキング

まずは財政力指数ランキングを確認する。データは2020年度のものを使用する。1位から順に見ていこう。

第1位:飛島村

財政力指数:2.21
全国順位:第1位

一般雑学・豆知識クイズなどでもお馴染み、日本一裕福な自治体。飛島村の財政が豊かな理由は、まず工業地帯としての地理的条件により、多額の法人税収入が得られる点にある。さらに、地理的な条件で住居が限られており、結果的に教育や福祉などの住民サービスにかかるコストが抑制されている。人口が増えすぎないことで、収入に対する支出を低く維持でき、結果として財政の余裕が生まれる。このバランスが飛島村の財政の豊かさを支えているのではないだろうか。

第2位:みよし市

財政力指数:1.40
全国順位:第11位

三好ヶ丘駅

みよし市の財政が豊かな理由は、まず名古屋市のベッドタウンとして人口が増加していることにより、個人住民税などの自主財源が豊富にある点が挙げられる。比較的新しく誕生した市であり、人口増加によって2010年に単独市制を施行している。また、トヨタ自動車関連の企業が市内に多く立地しているため、法人税収入も多い。さらに、都市基盤が整備され、住宅地(三好ヶ丘、黒笹など)としての魅力が高いことで、安定した税収基盤が確保されている。これらの要因が、みよし市の財政の豊かさを支えている。

第3位:豊田市

財政力指数:1.39
全国順位:第12位

豊田市駅前

全国順位11位であったみよし市とは隣接自治体であり、全国47都道府県ある中で上位12自治体にすでに愛知県から3自治体がランクイン。いかに愛知県が裕福な自治体が多いかがよく分かる。豊田市の財政が豊かな理由は、トヨタ自動車の本社があることで、多額の法人税収入が得られるから。さらに、市内にはトヨタ関連の企業が多数存在し、これも税収を支えている。トヨタが地域経済を活性化させることで、個人住民税も安定して増加。こうした豊富な財源をもとに、豊田市は公共サービスやインフラ整備を進め、地域の発展を支えている。さらに特筆すべきは、平成の大合併で財政的に厳しい山間部の自治体(過疎地域も多く含む)を取り込み、それでもなお高い財政力を維持し、西三河地域を支えている点だ。この点で、飛島村やみよし市とは異なる傾向を見せており、真の裕福自治体は豊田市なのではないか、という見方もできるだろう。

第4位:刈谷市

財政力指数:1.33
全国順位:第17位

刈谷ハイウエイオアシス

刈谷市の財政が豊かな理由は、トヨタ自動車やデンソーなどの大手企業が本社や主要拠点を市内に構えているため、多額の法人税収入が得られることにある。また、これらの企業が地域経済を支え、安定した雇用と人口を維持しているため、個人住民税も豊富に確保できる。さらに、工業都市としての発展により、固定資産税などの自主財源も充実している。これらの要因が、刈谷市の財政の豊かさを支えている。中心駅のJR刈谷駅は、自治体人口から考えれば多すぎる乗降客数を誇る。駅周辺における企業の充実具合が伝わってくる。自治体人口と中心駅利用者のバランスを比較した記事もぜひ参考に。
関連:人口比で中心駅の乗降客数が多い愛知県市区町村ランキング

第5位:東海市

財政力指数:1.29
全国順位:第21位

太田川駅

東海市の財政が豊かな理由は、主要な産業が多く立地しており、特に製造業の企業が集まっているため、法人税収入が安定しているから。特に、日本製鉄名古屋製鉄所をはじめとする大企業が名古屋港の埋立地エリアに多く立地している。企業の立地により、多くの雇用が生まれ、個人住民税も安定している。さらに、東海市は工業地帯の発展とともに商業施設も増加し、固定資産税やその他の税収も充実している。近年には中心駅である太田川駅周辺の再開発で、大学施設や商業施設、複数のマンションが建設されている。

第6位以下

6位の安城市以下、54位までの自治体ランキングを掲載する。20位の知立市までが、財政力指数1を超えている。

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順位自治体名地方財政力指数
1飛島村尾張地方(海部)2.21
2みよし市三河地方(西三河)1.4
3豊田市三河地方(西三河)1.39
4刈谷市三河地方(西三河)1.33
5東海市尾張地方(知多)1.29
6安城市三河地方(西三河)1.28
7小牧市尾張地方(尾張)1.25
8碧南市三河地方(西三河)1.21
9大口町尾張地方(尾張)1.19
10豊山町尾張地方(尾張)1.18
11幸田町三河地方(西三河)1.17
12大府市尾張地方(知多)1.14
13長久手市尾張地方(尾張)1.09
14日進市尾張地方(尾張)1.05
15岡崎市三河地方(西三河)1.04
16高浜市三河地方(西三河)1.02
17田原市三河地方(東三河)1.01
18武豊町尾張地方(知多)1.01
19豊橋市三河地方(東三河)1
20知立市三河地方(西三河)1
21名古屋市尾張地方(名古屋)0.99
22半田市尾張地方(知多)0.98
23春日井市尾張地方(尾張)0.98
24西尾市三河地方(西三河)0.98
25常滑市尾張地方(知多)0.98
26弥富市尾張地方(海部)0.98
27知多市尾張地方(知多)0.97
28東浦町尾張地方(知多)0.95
29尾張旭市尾張地方(尾張)0.92
30犬山市尾張地方(尾張)0.91
31北名古屋市尾張地方(尾張)0.91
32豊明市尾張地方(尾張)0.9
33東郷町尾張地方(尾張)0.9
34蟹江町尾張地方(海部)0.9
35稲沢市尾張地方(尾張)0.89
36瀬戸市尾張地方(尾張)0.88
37清須市尾張地方(尾張)0.88
38豊川市三河地方(東三河)0.87
39蒲郡市三河地方(東三河)0.87
40扶桑町尾張地方(尾張)0.85
41大治町尾張地方(海部)0.85
42一宮市尾張地方(尾張)0.83
43岩倉市尾張地方(尾張)0.82
44阿久比町尾張地方(知多)0.82
45江南市尾張地方(尾張)0.81
46津島市尾張地方(海部)0.77
47あま市尾張地方(海部)0.74
48美浜町尾張地方(知多)0.7
49愛西市尾張地方(海部)0.63
50新城市三河地方(東三河)0.57
51南知多町尾張地方(知多)0.53
52豊根村三河地方(東三河)0.28
53設楽町三河地方(東三河)0.24
54東栄町三河地方(東三河)0.19

下位に注目してみる

中核市で苦戦する一宮市

愛知県で唯一の政令指定都市である名古屋市の財政力指数は0.99だった。名古屋市に続く大都市として、県内には4つの中核市があるが、一宮市だけが財政力指数1を切っている。

しかしながら、県内で比較しているだけでは、一宮市の数値が悪いのか、他の県内中核市の数値が良いのかが分からない。そこで、全国の中核市を抽出して財政力指数ランキングを作成してみた。

順位中核市名財政力指数
1豊田市1.39
2岡崎市1.04
3豊橋市1
4宇都宮市0.99
5吹田市0.99
6川越市0.97
7川口市0.96
8船橋市0.96
9柏市0.96
10西宮市0.96
11八王子市0.94
12越谷市0.93
13豊中市0.91
14大分市0.9
15金沢市0.89
16姫路市0.89
17岐阜市0.87
18倉敷市0.87
19水戸市0.86
20郡山市0.85
21高崎市0.85
22尼崎市0.84
23那覇市0.84
24富山市0.83
25福井市0.83
26一宮市0.83
27前橋市0.82
28大津市0.82
29和歌山市0.82
30福山市0.82
31高松市0.82
32横須賀市0.81
33高槻市0.81
34いわき市0.8
35枚方市0.8
36福島市0.79
37山形市0.78
38明石市0.78
39東大阪市0.77
40奈良市0.77
41松山市0.77
42甲府市0.76
43盛岡市0.75
44長野市0.74
45松本市0.74
46八尾市0.74
47鹿児島市0.73
48宮崎市0.7
49八戸市0.67
50秋田市0.67
51久留米市0.67
52寝屋川市0.66
53高知市0.64
54呉市0.61
55長崎市0.59
56松江市0.58
57青森市0.56
58下関市0.55
59旭川市0.54
60佐世保市0.54
61鳥取市0.52
62函館市0.48
中核市のみ

こうして一覧にすると良く分かるが、一宮市の指数が特別悪いわけではなく、豊田市や岡崎市、豊橋市の指数が良いだけだった。中核市は財政力指数が1を切る自治体がほとんどだった。

一宮駅東口

奥三河自治体の順位

南知多町を挟んでいるが、新城市、設楽町、東栄町、豊根村の奥三河に位置する自治体が下位に集中している。この傾向の予測は容易だが、豊根村、設楽町、東栄町の順番を言い当てられる人はどれだけいるだろうか。最下位は、愛知県で最も人口が少ない自治体である豊根村ではなく、東栄町となった。おそらく、自治体の標準財政規模が影響していると思われる。人口が少ない山間部の3町村ではあるが、財政規模には顕著な差が見られる。豊根村の標準財政規模を1とした場合、東栄町は2.9、設楽町は4.36である。(2020年データで比較)

東栄町の全国順位は

愛知県で最も数値が悪かった東栄町だが、全国的にはどうなのか。調べてみると、1716自治体中1518位という結果だった。他に同じような数値の自治体としては、長野県阿南町や三重県大紀町、長崎県対馬市などがある。

東栄町中心部

尾張地方と三河地方で差はあるのか

大きく尾張地方と三河地方という区分はあるものの、あまりに広すぎる気がするので、愛知県の公式ホームページを参考に、6つの地方で分けて考察してみる。それぞれの地方に位置する自治体における財政力指数の平均値を算出した。結果は以下のとおり。

尾張地方(名古屋)0.99
尾張地方(尾張)0.96
尾張地方(海部)1.01
尾張地方(知多)0.94
三河地方(西三河)1.18
三河地方(東三河)0.63

一番裕福なエリアは西三河

複数の自治体の平均値を取った場合、財政力指数が1を超える地域は海部エリアと西三河エリアだけとなった。海部エリアは、飛島村の数値が非常に高いため平均値を押し上げており、実態を反映していない可能性がある。一方、西三河エリアは、豊田市、みよし市、刈谷市など、裕福な自治体が多い。トヨタグループの本拠地であるこのエリアは、愛知県内だけでなく全国的にも最も裕福な地域といえるだろう。

尾張地方も財政力がある

尾張地方は、財政力指数が平均で0.9台だった。全国的には市町村平均が約0.5であることを考えれば、かなり財政力がある自治体が多いエリアであると言える。

県の単位でも高水準

市町村だけでなく、県に目を向けてみる。愛知県は、財政力指数で1を切っているが、それでも全国2位。財政力指数が1を超えている都道府県は東京都のみ。2000年代であれば、愛知県も財政力指数が1を超えていた時期もあった。

20年も経てば財政力指数はかなり変動する。市町村も同様で、小さな町だと大企業1社に依存しているケースも少なくない。今後の変動にも注目していきたい。

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