地名の知名度と距離感が生む「名古屋出身」の真相
愛知県出身者が「名古屋出身」と自称することが多いという話は、県外の人には興味深いかもしれない。特に、名古屋市民ではないにもかかわらず、名古屋出身と答える人々の理由を考察してみると、その背景にはいくつかのポイントが浮かび上がる。
まず、地名の知名度が大きな要因だろう。たとえば、知られていない地名を使うよりも、名古屋という全国的に認知されている地名を使う方が、相手に余計な説明をする手間が省ける。愛知県民にも分かりやすい例を出せば、「仙台出身」と言ったほうが「富谷市出身」と言うよりも分かりやすいのと同じ。
次に考慮すべきなのは「距離」の問題だ。どれだけ地名が知られていても、物理的に遠い場所の出身者がその地名を使うのは違和感がある。たとえば、松江市が知られていても、益田市民が松江出身と自称するのは不自然だろう。
では、愛知県内のケースに話を戻そう。名古屋に匹敵する知名度や都市規模を持つのは、豊田市、豊橋市、岡崎市といった都市だ。特に豊田市民は、自らを「名古屋出身」と言う必要は感じないだろう。豊橋市も新幹線駅があり、名古屋とは異なる都市圏を形成しているため、「名古屋出身」と言う人は少ないはずだ。岡崎市に関しては、名古屋に近い位置にありながらも三河地方に属し、近年では全国的な知名度も上がっているため、「岡崎出身」と答える人が多いと考えられる。
一方で、一宮市のように名古屋市と同じ尾張地方に位置し、距離的にも非常に近い都市では、名古屋出身と自称する人が多いのではないかと思われる。同様に、春日井市など他の尾張地方の街も同様の傾向があるだろう。
結論として、「出身は名古屋」と言う人々は、おそらく名古屋都市圏に住む人々であり、地理的な都市圏の広がりがその背景にあると言えるだろう。豊川市民が「豊橋出身」、みよし市民が「豊田出身」と自称するのと同じように、「名古屋出身」というのは実際には「名古屋都市圏出身」という意味が省略されているのかもしれない。要するに、名古屋出身を自称する人が多い理由は、名古屋都市圏が広範囲にわたるからだと思われる。