東海地方を舞台に、イルミネーションの目的や実施形態について考察してみる

冬になると盛り上がる、イルミネーションイベント。12月に入れば、東海地方でも多くの場所・施設でイベントが実施されている。イルミネーションで賑わう公園や観光地を見ると、まちおこしの有力な選択肢になり得る気がしてくる。では、ゼロからイルミネーションでまちおこしをやろうと思えば、どういった形態が考えられ、どんな課題があるだろうか。
民間主導と行政主導
「○○県 イルミネーション」で検索をかければ、色々なイベント情報がヒットし、ランキングなどでまとめられている。それらを見ると、まず大きく分けて、テーマパークや大型商業施設が実施している民間主導型のイベントと、公共施設を中心に実施されている行政主導型イベントに分けることができそうだ。まちおこしが必要な地域については、おそらく民間型イベントの実施が難しいと思われるため、行政型を考えていく必要があるが、一応民間型の内容も見ておこう。
民間主導イルミネーションの特徴
民間主体のイルミネーションは、明確な「集客」と「収益化」を目的に設計される。愛知県でいえばラグーナテンボス(蒲郡市)や、なばなの里(桑名市)が代表格で、広大な敷地を活かした演出や最新技術の投入によって、一つの観光施設として完結した体験価値を作り上げている。入場料や飲食・物販の売上が収益源であり、投資回収を前提にした大胆な演出が可能になる。結果として、季節イベントでありながらテーマパークに近い運営モデルが確立している。
入場料が主な収入源となるため、中途半端な規模では集客が厳しく、大規模でなければ維持は難しいだろうと感じる。このケースが成り立つのは、選ばれし民間観光施設だけだろう。
行政主導イルミネーションの広がり
行政主体のイルミネーションは、地域の「賑わい創出」が主目的となる。公園、市民会館、駅前広場といった公共空間を装飾し、無料で開かれる場合がほとんどだ。派手さは抑えめでも、住民の日常の中に季節感を届ける点に強みがある。お金の循環を生むことは難しく、小規模に行われることが多い。周辺から人を集めるよりも、「地元民に楽しんで欲しい」イベント。
私も静岡からの帰り道、たまたまアミューズ豊田(磐田市)の公共施設前を通った時にイルミネーションを見つけて楽しんだ。


また、観光地で実施するケースでは、来訪者の滞在時間延長によって周辺の物販が潤う仕組みも成り立ち、地域経済への寄与も小さくない。
協賛企業と商工会が担う中間的モデル
行政と民間の中間に位置するのが、協賛企業や商工会が主体となる形だ。地元企業から協賛金を募り、その代わりに会場で企業名を掲示する。行政のイベントより規模を拡大しつつ、民間主導のように高額な投資は行いにくいため、地域の手づくり感と一定の見応えが共存する。商工会が旗振り役となる場合、地域店の売上向上や回遊性向上が目的に据えられ、まちの経済循環を意識した設計が特徴となる。
つい最近、私が行ってみたイルミネーションイベントは以下のケースだった。
あま市のケース


商工会が実施しており、公共施設(図書館などの複合施設)を取り囲む公園にイルミネーションが設置されていた。地元感があり、小さい子連れの家族が多かった。募金があったが、入場料や物販、屋台などお金をとる仕組みが無く、商業色をまったく感じなかった。
清須市のケース


協賛企業を募り、清洲城と公園で大規模に行われていた。入場料こそ無料だが、協賛企業紹介パネルや清洲城へのプロジェクションマッピングで協賛企業を紹介したり、観光物販施設が営業していたり、屋台が並ぶエリアがあったり、お金が循環する仕組みがいくつも用意されていた。
来訪者体験の違いから見る価値の幅
民間イベントは「非日常の没入体験」、行政イベントは「地域の日常への彩り」、商工会型は「地元とつながる温かさ」というように、来訪者が感じる価値は大きく異なる。巨大なスケールで圧倒するものから、家族散歩の延長として気軽に楽しめるものまで、イルミネーションは受け取り方の幅が広い。また、無料か有料かという違いは、期待値や滞在行動に直接影響し、イベントデザインの方向性も左右している。イベントを始めるのであれば、目的によって入場料の有無を検討していく必要があるが、相当に規模が大きくなければ無料が無難だろう。


写真は赤目四十八滝(名張市)。入場料を払うだけの価値がある大規模なイベント(幽玄の竹あかり)で、多くの観光客で駐車場に待ちが発生するほど。
地域がイルミネーションに込める戦略
イルミネーションは単なる冬の演出ではなく、地域の戦略が映し出される場でもある。民間は投資と回収の循環を重視し、行政はまちの魅力向上や人流創出を目的に、商工会は地域商店の活性化を目指す。いずれの形態も、光の装飾を通じて「地域の価値をどう高めるか」という問いに向き合っている。
イルミネーションの難しいところは、人が集まってきても「夜」という点。他の観光施設や商店街などへの波及効果は限定的だ。ともすれば、行政や商工会主体で「まちおこし」を目的に実施した場合でも、そこにお金が落ち、予算的にも持続可能なイベントにしていく視点が必要になってくるだろう。

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