名古屋市の行政区で四天王を決めるのであれば、どこを選ぶべきか

政令指定都市である名古屋市には、16の行政区が設けられている。大阪市の24区、横浜市の18区、札幌市の10区、福岡市の7区と比べると、多くも少なくもない印象。名古屋市もこれらの大都市と同様に、周辺部の合併によって市域を広げてきた。よって、同じ名古屋市の行政区であっても、その特徴や状況にはかなり違いがある。今回は、名古屋市の16行政区から代表する区を四天王として選ぶのであれば、どの区を選ぶのか、筆者なりの結論を出してみたいと思う。
人口規模や将来人口で比較した結果、居住という側面では緑区を選出
まずは大定番の人口規模データを比較してみる。また、将来性も考慮し、65歳以上人口割合、2045年推計人口と人口増減率もデータ分析に用いる。基本的には2020年国勢調査のデータを使用している。
人口規模で見た場合、緑区と中川区が突出しているようだ。15万人前後の行政区が多い中で、緑区の人口は25万人近い(図-01)。人口10万人を切っている行政区は全部で3区あり、少ない順に熱田区、東区、中区だった。あとで昼夜間人口比率の分析も行うが、この3区は昼間に人口が流入する行政区であり、決して衰退しているから人口が少ないというわけでない。
図-01

図-02

将来性も見てみると、人口で首位だった緑区が、2045年までの人口増減率でも同じく首位となっている(図-02)。日本全体が少子高齢化で人口減少社会へ突入した中で、名古屋市でも人口増加が見込まれる行政区はたったの3区しかない。増加率が高い順に、緑区、東区、千種区だ。現在人口2位の中川区も、2045年には人口20万人を切り、緑区との差はより大きくなると見込まれている。
よって、人口規模や「居住」という観点で見た場合、緑区が抜き出て優勢であるため、緑区に四天王へ加入してもらう。


中京都市圏における経済の中心地である中区、交通の要衝である中村区
居住ではなく、通勤や通学する人に注目すると、名古屋市の都市構造が見えてくる。他市区町村からの通勤者比率と、他市区町村への通勤者比率を分析すると、明らかに中区が突出している傾向が読み取れる(図-03)。これは、東京区部でいえば千代田区のような、大量の通勤者が区域へやってくる中心都市型の行政区であることを示している。
その他で目立つのは港区と中村区。港区については他市区町村からの通勤者比率はそれほど高くないが、他市区町村への通勤者比率が極端に低い。すなわち、港区に住んでいる人たちの多くは、港区内で働いている状況が読み取れる。中村区も同様に他市区町村への通勤者比率が低い。中村区には東海地方の交通結束点である名古屋駅が位置するにもかかわらず、他所へ通うために中村区に住む人は少ないということだ。
図-03

図-04

続いて、同じように中心都市型の都市で数値が大きくなる傾向がある商業年間商品販売額と、昼夜間人口比率を見ていく。結果、中区、中村区、東区が突出する状況となった(図-04)。この3区が、名古屋市の中心部と言えそうだ。
名古屋市の小売業・卸売業と言えば、栄や大須を要する中区のイメージが強いが、名駅エリアの成長によって、現在では中村区が圧倒的な数値を叩き出している。ちなみに、名古屋市中村区の従業者1人当たりの商業年間商品販売額は、全国の行政区で首位である。2位以降は、大阪市北区、名古屋市東区、京都市南区、名古屋市中区、大阪市中央区、福岡市博多区、仙台市青葉区と錚々たる面々が続く。
全国的に見ても恥ずかしくない、立派な四天王ということで中区と中村区を加えることにする。リニア中央新幹線の開通も控え、ますます中村区が成長する可能性もある。


最後の一枠は、製造品出荷額で判断して港区に
最後に、ものづくり王国愛知の観点から、製造品出荷額でも16行政区を分析したい。名古屋市におけるモノづくりは、港区と南区がその役割を担っているようだ(図-05)。港区、南区、東区で出荷額の数値は高くなっているが、首位の港区が次点の南区にダブルスコア近く付けており、名古屋港を要する港区の強さが現れた形だ。
ただし、全国の行政区と比較した場合には第11位となっている。工業が盛んな政令指定都市としては川崎市や北九州市をイメージする人が多いだろう。実際の順位は、首位から順に川崎市川崎区、堺市西区、広島市南区、神戸市西区、静岡市清水区であった。
工業が強いのは豊田市をはじめ三河地方であるが、名古屋市を代表する工業エリアである港区も四天王に参加してもらおう。他に比べて根拠が少し弱い気もするが。
図-05


結果・感想
最終的には、名古屋市四天王は港区、緑区、中村区、中区という結果になった。あなたが選ぶ場合はどうなるだろうか、ぜひお聞かせ願いたい。筆者の四天王であれば、先鋒は港区か緑区、リーダーは中区になるだろうか。おそらく、この結果には東区の人がご立腹かもしれない。選出する行政区の多様性を重視した結果、東区は泣く泣く選出できなかった。ご容赦いただきたい。


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