愛知県にみるシティプロモーションの熱や現在地について

愛知県内の自治体を一覧すると、シティプロモーションには一定の「型」が存在することが見えてくる。キャッチコピーの設定、専用ウェブサイトの開設、ビジュアルの統一など、手法自体は広く共有されている。しかし、その取り組みの濃淡には明確な差がある。

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愛知県内の自治体における、プロモーションの実行状況

実際に整理した表を見ると、キャッチコピーを掲げている自治体と、そうでない自治体がはっきりと分かれる。さらに、専用のプロモーションサイトまで整備している例となると、その数は一段と限られる。言い換えれば、愛知県内のシティプロモーションは「実施しているかどうか」ではなく、「どこまで踏み込んでいるか」という段階差の中にある。

専用ページの一例

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名古屋市
瀬戸市
犬山市
東郷町
豊川市
高浜市
蒲郡市
津島市
岡崎市

専用ロゴの一例

名古屋市
大治町
岩倉市
みよし市
小牧市

愛知県内の状況一覧表

筆者視点で、かなり力が入っているなと感じた自治体は赤く着色してある。

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自治体コード自治体名キャッチフレーズURL
23100名古屋市やさし、あたらし、大名古屋リンク
23201豊橋市ノスタリッシュTOYOHASHIリンク
23202岡崎市岡崎ルネサンスリンク
23203一宮市記載なしリンク
23204瀬戸市いいもんせともんリンク
23205半田市情熱、蔵出し。半田市。リンク
23206春日井市かすがいでつながるリンク
23207豊川市CITY AND PEOPLE 〜ひとのわ、とよかわ〜リンク
23208津島市ちょうどよい とかいなか つしまちくらしリンク
23209碧南市記載なし
23210刈谷市記載なし
23211豊田市ファースト暮らすとよたリンク
23212安城市安城こどもBOOSTERSリンク
23213西尾市記載なし
23214蒲郡市いいじゃん蒲郡リンク
23215犬山市住むまちいぬやまリンク
23216常滑市記載なし
23217江南市暮らしが花ひらく生活都市。リンク
23218小牧市キミと一緒に、育っていきたい。リンク
23219稲沢市わざわざいなざわ?リンク
23220新城市記載なし
23221東海市記載なしリンク
23222大府市サスティナブル健康都市おおぶ
23223知多市ちょうどいいまち知多
23224知立市輝くまち、みんなの知立
23225尾張旭市あさひの魅力 未来へ咲くひまわりリンク
23226高浜市かわらんどリンク
23227岩倉市いわくらしやすいリンク
23228豊明市大金星のまち とよあけリンク
23229日進市記載なし
23230田原市記載なし
23231愛西市記載なし
23232清須市英気充実 きよスポットリンク
23233北名古屋市記載なし
23234弥富市記載なし
23235みよし市My city Miyoshiリンク
23236あま市記載なし
23237長久手市記載なし
23302東郷町ちょうど級タウン東郷町リンク
23342豊山町記載なし
23361大口町桜咲く 笑顔咲く 大口町リンク
23362扶桑町記載なし
23424大治町名物は、地元愛。リンク
23425蟹江町記載なし
23427飛島村実は飛島村リンク
23441阿久比町記載なし
23442東浦町記載なしリンク
23445南知多町ウミひとココロ
23446美浜町海まで5分。美しい浜と里山のある生活。リンク
23447武豊町記載なし
23501幸田町記載なし
23561設楽町記載なし
23562東栄町記載なし
23563豊根村記載なし

こうした中で、県内最大都市である名古屋市も、近年はキャッチコピーと専用サイトを整備し、プロモーション施策の体系化を進めている。県下最大都市の積極的な取り組みは、かなり目立っていると言えよう。全体として見れば、「やる自治体」は確実に増えている、増えていくと言えるはずだ。

ご当地キャラでもPR(愛西市)
ご当地キャラでもPR(知立市)

キャッチコピーからみえるプロモーションの方向性

キャッチコピーの内容に目を向けると、その方向性は大きくいくつかに分類できる。たとえば、「住むまちいぬやま」や「ちょうどいいまち知多」に代表されるような定住・暮らし訴求型は、生活の質やバランスの良さを前面に押し出す。一方で、「いいじゃん蒲郡」「いいもんせともん」のように観光やイメージを直接的に喚起するタイプもある。

さらに興味深いのは、「岡崎ルネサンス」や「大名古屋」に見られる抽象ブランド型である。これらは具体的な利便性や観光資源ではなく、都市の性格や方向性そのものを言語化しようとする試みだ。とりわけ名古屋市の掲げる「やさし、あたらし、大名古屋」は、個別の魅力を列挙するのではなく、都市全体のイメージを束ねる言葉として機能している。

岡崎(かき氷街道)
岡崎(歴史のまち)

また、「キミと一緒に、育っていきたい。」のような共感型や、「わざわざいなざわ?」「実は飛島村」といった尖り型のコピーも見逃せない。前者は関係人口や市民参加を意識した設計であり、後者は話題化や拡散を狙ったものである。

観光資源の乏しい自治体では、住民や環境を「売り」にしていく方策がとられることが多く、第一歩としてシビックプライド(地元愛)を育み、その熱を外へ届ける傾向がある。よって共感型のキャッチコピーが選ばれるのだろう。

反対に、名古屋市や岡崎市のようなプロモーション資源に溢れた自治体は、絞りすぎたキャッチコピーでは勿体無い・選ばれなかったテーマ関係からの反発などの事態が目に浮かぶ。都市全体を包括するような抽象的なブランディングになっていくことも必然な気がする。

いずれにせよ、キャッチコピーは単なる装飾ではなく、「誰に、何を届けたいのか」という戦略の違いを端的に示している。

ブランディングの効果は、その目的によって変わる

では、こうしたプロモーションは実際にどの程度機能しているのだろうか。結論から言えば、キャッチコピー単体で高い認知を獲得しているケースは多くない。市民ですらキャッチコピーを即答できないことは珍しくなく、外部に対する浸透度も限定的である。

表に記載したキャッチフレーズのうち、あなたはどれくらい知っていただろうか。実際には、自治体があまり推していないキャッチコピーもあるので、生活の中で目にすることはほぼ無い可能性も高い。

ただし例外もある。たとえば「わざわざいなざわ?」のような強い違和感を伴うコピーは、SNSなどを通じて記憶に残りやすい。また、「住むまちいぬやま」のように移住施策と一体的に運用されている場合、言葉が具体的な行動へと結びつきやすい。重要なのは、コピー単体の巧拙ではなく、それが政策や事業とどれだけ連動しているかである。

その点で言えば、名古屋市や豊田市のように既に高い知名度を持つ都市は、やや異なる立ち位置にある。新たに認知を獲得するというよりも、既存のイメージをどう再編集するかが主題となるからだ。ここには、「ゼロから魅力を伝える都市」「魅力を再構成する都市」という、ブランディングの性質の違いが表れている。

自治体の知名度を上げたいのか、観光客を増やしたいのか、定住者を呼び込みたいのか、目的は様々であるからこそ、それに合った効果測定も必要なのである。

自治体のPR時に、統一ブランドは本当に必要か?

最後に、統一的なブランドやキャッチコピーは本当に必要なのかという点に触れておきたい。中規模自治体においては、これは明確な武器となり得る。庁内の方向性を揃え、観光協会や民間事業者との連携を促し、情報発信に一貫性をもたらすからである。

PR材料が多い名古屋市
PR材料が多い豊田市

大都市においても役割は似ている。多様な魅力を持つ都市では、統一ブランドは「何かを強調する」ためというよりも、「ばらばらの要素を束ねる」ための装置として機能する。その意味で、名古屋市の取り組みは、統一ブランドのもう一つの使い方を示しているとも言えるだろう。

もっとも、いずれの場合においても、ブランドは掲げるだけでは意味を持たない。運用され、使われ続けて初めて、政策としての実体を伴う。

感想・まとめ

愛知県内の事例を俯瞰すると、シティプロモーションの差は「実施の有無」ではなく、「どのような目的で使われているか」に現れている。課題解決のためのツールとして用いる自治体もあれば、都市のイメージを再編集するために用いる自治体もある。キャッチコピーは、その違いを映し出す一つの指標に過ぎない。だがその背後には、各自治体がどの方向を向こうとしているのかという、確かな意思が潜んでいる。この方向性が曖昧なまま、流行りだからとプロモーションを始めても、チグハグなままで浸透しない可能性が高い。

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