特急南紀が通過する主要自治体、紀北町・尾鷲市・熊野市・新宮市の都市規模を比較してみる
JR紀勢本線で名古屋から新宮市を目指す場合、松阪駅を過ぎるとかなり山深くなる。松阪市の後、人口が10万人を超える大きな街は、なんと新宮市を超えて和歌山市まで現れない。そんな中でも、規模の大きな街はいくつか通過する。今回は筆者が選抜した4つの街、紀北町、尾鷲市、熊野市、新宮市について調べてみる。
2024年1月1日時点人口
紀北町(13,465人)
尾鷲市(14,955人)
熊野市(14,901人)
新宮市(25,700人)
鉄道で比較してみる
比較する4つの街はすべてJR紀勢本線が中心部を通る。それぞれの主要駅は、紀北町が紀伊長島駅、尾鷲市が尾鷲駅、熊野市が熊野市駅、新宮市が新宮駅。当然ながら、これらの駅はJR特急「南紀」の停車駅となっている。駅の利用客で比較してみる。
紀伊長島駅 217人/日(2019年)
尾鷲駅 379人/日(2019年)
熊野市駅 465人/日(2019年)
新宮駅 920人/日(2019年)
1位は新宮駅。1998年の段階では1日平均乗車人員が2,000人を超えていた。新宮駅は名古屋方面からの特急「南紀」と、大阪方面からの特急「くろしお」が発着する駅で、JR東海とJR西日本の境界駅でもある。
尾鷲駅<熊野市駅であることに注目。私は尾鷲駅の方が利用者が多いと思っていた。このような結果になる理由は、ハッキリとは分からない。尾鷲駅ー松阪駅に比べて熊野市駅ー新宮駅の需要が高いのかな。
駅を中心とした人口規模を調べる
駅の利用者では熊野>尾鷲だった。この理由を深掘りすべく、紀勢本線の松阪駅〜新宮駅までの各駅周辺人口(2km円)を調べてみた。
駅名 | 周辺人口(人) |
---|---|
新宮駅-2km | 18,266 |
鵜殿駅-2km | 5,500 |
紀伊井田駅-2km | 2,950 |
阿田和駅-2km | 1,895 |
紀伊市木駅-2km | 2,313 |
神志山駅-2km | 2,561 |
有井駅-2km | 2,226 |
熊野市駅-2km | 2,229 |
大泊駅-2km | 1,307 |
波田須駅-2km | 334 |
新鹿駅-2km | 361 |
二木島駅-2km | 479 |
賀田駅-2km | 471 |
三木里駅-2km | 381 |
九鬼駅-2km | 291 |
大曽根浦駅-2km | 669 |
尾鷲駅-2km | 12,144 |
相賀駅-2km | 1,155 |
船津駅-2km | 1,705 |
三野瀬駅-2km | 499 |
紀伊長島駅-2km | 2,627 |
梅ヶ谷駅-2km | 401 |
大内山駅-2km | 357 |
伊勢柏崎駅-2km | 340 |
阿曽駅-2km | 492 |
滝原駅-2km | 883 |
三瀬谷駅-2km | 1,620 |
川添駅-2km | 1,026 |
栃原駅-2km | 1,854 |
佐奈駅-2km | 1,911 |
相可駅-2km | 6,080 |
多気駅-2km | 2,726 |
徳和駅-2km | 19,241 |
松阪駅-2km | 37,453 |
表を見ると一目瞭然で、熊野市から新宮市にかけては人口が多い地域。地形図を見るとよく分かるが、熊野市から新宮市にかけては平地が広がっている。これは東紀州の地域では珍しい。逆に尾鷲市は中心部こそ平野があり市街地が密集しているが、隣はすぐ山に囲まれ、中心部以外に人が住めるエリアがほぼない。通学などの鉄道需要を考えれば、住宅地が長く広がっている熊野市周辺の方が利用者が多くなることは当然の結果だろう。
歴史で比較してみる
まずは市制移行年を確認していく。
紀北町
北牟婁郡紀伊長島町・海山町が合併。
尾鷲市(1954年6月)
北牟婁郡尾鷲町、須賀利村、九鬼村、南牟婁郡北輪内村、南輪内村が合併。
熊野市(1954年11月)
南牟婁郡木本町・荒坂村・新鹿村・泊村・有井村・神川村・五郷村・飛鳥村が合併。
新宮市(1933年)
東牟婁郡新宮町・三輪崎町が対等合併。
大正9年の人口比較
大正9年(1920年)の国勢調査から、現在の街中心部となっている当時の自治体人口を調べてみた。
自治体名 | 世帯数 | 人口 |
---|---|---|
北牟婁郡長島町 | 1,080世帯 | 5,102人 |
北牟婁郡尾鷲町 | 2,768世帯 | 12,810人 |
南牟婁郡木本町 | 1,068世帯 | 4,765人 |
東牟婁郡新宮町 | 5,563世帯 | 23,964人 |
この時点で、新宮市が圧倒していた。当時、新宮町は和歌山県で2番目の人口を誇る自治体であり、市制移行も県庁所在地である和歌山市に次ぐ県下2番目だった。
昭和35年の人口比較
昭和35年(1960年)の国勢調査から、現在の街中心部となっている当時の自治体人口を調べてみた。
自治体名 | 人口 | 人口密度 |
---|---|---|
北牟婁郡長島町 | 15,649人 | 141.6人/㎢ |
尾鷲市 | 34,534人 | 176.6人/㎢ |
熊野市 | 30,586人 | 118.7人/㎢ |
新宮市 | 39,114人 | 490.6人/㎢ |
合併を経て、人口を増やし、尾鷲市や熊野市、新宮市が誕生している。人口規模としては拮抗してきているようにも見える。ただし、人口密度を見て分かるように、新宮市はかなりの密集市街地となっていることが分かる。ちなみに、5年前の1955年と比較した人口増減率は、長島町が-6.8%、尾鷲市が3.6%、熊野市が-4.7%、新宮市が1.5%だった。
可住地面積で人口密度を求める
ここまで調べた結果だと、おそらく可住地面積で人口密度を求めれば、尾鷲市>熊野市となるはずだが、果たしてどうなるか。
自治体名 | 人口 |
---|---|
北牟婁郡紀北町 | 5.31 /ha |
尾鷲市 | 10.53 /ha |
熊野市 | 3.77 /ha |
新宮市 | 12.65 /ha |
想定通りの結果となった。熊野市は可住地面積が多いため、紀北町よりも密度が低くなった。
結果、やはり最大都市は新宮市
今回は4つの街を比較したが、当初の予想通り新宮市が一番都市規模が大きいと言えそうだ。人口規模、歴史を見てもこれは揺るぎない。また、主観的にはなるが街の景観は圧倒的に新宮市が都会だ。
新宮市にはニトリやマクドナルドなどのチェーン店がある。また、はま寿司の店舗があり、これは4つの街で唯一の回転寿司チェーン。
尾鷲市と熊野市は、タイプの異なる街であることが見えてきた。地形図や駅利用者、駅周辺人口から見えてきたのは、熊野市は薄く広く市街地が広がっているのに対して、尾鷲市は市街地が中心部に密集していること。実際に訪問した感覚では、尾鷲市の方が大きい街だと感じた。尾鷲市は、街中心部の国道42号が4車線かされており、より都会感を引き立たせている。
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