都会と山間部、尾張地方と三河地方、愛知県の人口増減を市町村単位で見てみよう

全国的には都市部に人口が集中し、山間部は過疎化が進む傾向にある。もちろん、愛知県内でも同様の傾向は見られるだろうが、実際のところ、どれくらい二極化が進んでいるのだろうか。

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愛知県内56自治体における、人口増加率の上位自治体

2020年国勢調査のデータを使用し、愛知県内における直近の人口増加率上位5自治体を調べてみた。2015年時点と比較して、どの程度の人口増減があったかを示している。その結果は以下のとおり。

1位 幸田町(7.33%)

JR東海道線沿線で名古屋・豊田への通勤圏。地価が手頃で住宅開発が進み、子育て支援も充実。三河エリアの中で注目される成長地域。西三河地方の東端に位置しているため、豊橋への通勤や通学も現実的。

幸田駅
幸田町役場

2位 大治町(4.55%)

名古屋市の西隣という立地の強みが大きい。バスの利便性が高く、コンパクトながら住宅地としての人気が高まっている。名古屋市中心部からの直線距離は、千種区の星ケ丘あたりと同じ。

3位 大府市(4.45%)

刈谷・豊田などの工業都市に近接し、交通インフラが発達。福祉や子育て環境の整備が進み、住みやすい中核的な住宅都市へ成長中。ただし、大きい企業の立地もあり、昼間人口が増加する自治体。

4位 長久手市(4.45%)

名古屋東部に隣接し、交通機関としてリニモが整備され、イオンやIKEAなど大型商業施設が整う。若年層向けの住宅地が多く、大学や文化施設も豊富で人気の高いニュータウン。平均年齢が日本で一番若い街としても知られる。

5位 大口町(4.43%)


犬山市や小牧市に近く、工業団地を抱える製造業の町。6車線で整備された国道41号線が町域を縦断し、道路交通の利便性が高い。都市と農村のバランスが取れたコンパクトな町づくりが進む。

愛知県内56自治体における、人口減少率の上位自治体

こちらも2020年国勢調査のデータを使用し、愛知県内における直近の人口減少率上位5自治体を調べてみた。その結果は以下のとおり。

1位 東栄町(-14.63%)

奥三河の山間部に位置し、人口規模は県内最小クラス。高齢化と若年層流出が深刻で、交通・医療・雇用の課題が重くのしかかる。

東栄町中心部
体験交流館 のき山学校

2位 設楽町(-12.55%)

町の約9割が森林で占められ、過疎化が進行している。ダム建設や観光振興もあるが、定住人口の回復には至っていない。ただし、豊根村と東栄町と比べると、かなり市街地が大きい。

3位 南知多町(-11.17%)

知多半島の先端にあり、観光や漁業が中心。一方で定住環境は弱く、若者の流出と高齢化により人口減少が加速している。

4位 豊根村(-10.40%)

愛知県最東端の村で、山林率が極めて高い。県内で唯一の村として残るが、交通の不便さと過疎の深刻さは県内でも際立つ。愛知県民でも、気軽に行くことが難しく、県内で最も都市部から離れた自治体と言って間違いない。

5位 新城市(-5.89%)

山間部の消防は新城消防が担うなど、奥三河の中心都市だが、周辺からの通勤圏になりきれず、人口減少が続く。面積は広大でも、平地や利便性に乏しい点が課題。

尾張地方の自治体を抑えて1位となったのは西三河の自治体

増加率トップの幸田町は、西三河に位置するベッドタウン。JR東海道線沿線という立地の良さに加え、碧南・刈谷・岡崎・安城など自動車関連産業で工業集積が進んでいる主要都市に囲まれており、働く場所と住む場所のバランスが取れている。2〜5位の大治町・大府市・長久手市・大口町も同様に、都市圏との近接性が際立つ自治体ばかりだ。1位の幸田町のみが三河地方で、5位までは尾張地方の自治体がランクインした。

人口減少がかなり進んでおり、深刻な状況の奥三河

減少率トップの東栄町や設楽町、豊根村はいずれも奥三河に位置する山間部の自治体。インフラや医療、教育へのアクセスが難しい上、雇用の場も限られる。高齢化と若年層流出が進み、人口減少に拍車がかかっている。より平野部に近い新城市ですら、減少率で5位にランクインするほど厳しい状況だ。

南知多町は観光資源が豊富とはいえ、通勤圏としての利便性には乏しい。南知多町は知多半島の一番先に位置する自治体であるため、地理的に厳しい。世界的にみても、基本的には半島という地形は、付け根部分が栄え、先端付近は発展が難しい。実際に知多半島の付け根に位置する大府市や東海市、東浦町は人口増加している。

都市圏の中心都市で比較しても、やはり東三河地方の厳しさが見えてくる

増加率の高い自治体は、ベッドタウン型の都市がほとんど。独自の都市圏を持つ中心都市でみた場合には、増加率トップは名古屋市、豊田市は微減、次いで豊橋市となった。豊田市は、平成の大合併で取り込んだ広大な山間地域を抱えているため、人口減も仕方がない印象を受ける。

心配なのは豊橋市で、東三河地方全体として元気がない。蒲郡市や田原市も人口が減少していて、東三河地方で増加率がプラスだったのは豊川市のみ。

感想・まとめ

都市近郊の自治体が人を集め、山間部や半島部では人が減っていく。これは愛知県に限った話ではなく、全国で共通する構造的な現象でもある。県内の地方で比較した場合、大都市である名古屋市を抱える尾張地方よりも三河地方で人口減少傾向が強い。さらに言えば、広大な山間部の過疎地域を抱える東三河地方の人口減少が顕著だ。急速な人口減少に対して、どのようにインフラの維持や文化の保存など数多くの課題と向き合っていくのか、すでに広域連合でリーダーシップを発揮している中心都市の豊橋市に期待したい。

中心部の再開発が進む豊橋市
歓楽街の松葉町

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