製造品出荷額ランキングから愛知県の市町村を考察する
製造品出荷額等のデータを基に、愛知県内の市町村でランキングを作成した。尾張地方で健闘している市町はどこか気になるところだ。
上位20自治体
順位 | 市区町村 | 製造品出荷額等 【百万円】 |
---|---|---|
1 | 豊田市 | 1,416,663 |
2 | 名古屋市 | 354,791 |
3 | 安城市 | 208,178 |
4 | 岡崎市 | 205,744 |
5 | 田原市 | 201,526 |
6 | 刈谷市 | 161,390 |
7 | 幸田町 | 158,274 |
8 | 東海市 | 153,692 |
9 | 西尾市 | 145,593 |
10 | 小牧市 | 144,491 |
11 | 豊橋市 | 130,148 |
12 | 知多市 | 110,011 |
13 | みよし市 | 96,168 |
– | 名古屋市 港区 | 95,563 |
14 | 大府市 | 92,453 |
15 | 稲沢市 | 89,032 |
16 | 碧南市 | 80,025 |
17 | 半田市 | 79,784 |
18 | 豊川市 | 78,743 |
19 | 春日井市 | 74,171 |
20 | 一宮市 | 52,180 |
国道23号バイパスを名古屋から豊橋へ走っていると、大きな工場が多くて毎度驚く。流石はモノづくり王国の愛知県だと感じさせてくれる。
今回は愛知県のモノづくりに関係する経済センサスのデータを基にランキングを作成した。気になる部分を深堀りしていく。
豊田市はどれだけ
飛び抜けているのか
ランキングで目を引くのは豊田市の圧倒的な数値だ。豊田市と名古屋市が抜けてることは容易に想像できたが、ここまでの差は想定外。
愛知県全体の出荷額の中で、豊田市はどれくらいを占めているか気になったので円グラフにしてみた。
図1に示すとおり、愛知県全体の製造品出荷額のうち約3割は豊田市が占めている。名古屋市は7.7%で、豊田市と比べてしまうと少なく見えるが、全国では9位の出荷額(2019年)。もちろん、豊田市は全国でも1位となっている。ちなみに、全国での上位5市は、順に豊田市、川崎市、市原市※1、横浜市、倉敷市※2だ。
※1 臨海部に国内最大規模の石油コンビナート群を有し、造船所も複数ある。
※2 水島地区など、国内有数の重化学工業地帯が存在する。
トヨタ自動車の影響
トヨタ自動車株式会社 本社工場前
この豊田市、2022年現在では愛知県で2番目に人口の多い街となっている。歴史的な愛知県の街である岡崎や吉田(豊橋)を僅差で追い抜いている。
合併で愛知県1位の広さになったこともあるが、やはりトヨタ自動車の企業門前町として戦後に急速な発展を遂げたことが大きい。合併に関しても、そもそも合併前の豊田市が財政豊かであったからこそ、財政力の乏しい東三河山間部の自治体を合併できたのだと個人的には考えている。
豊田市内にはトヨタ自動車の大きな工場がある。ストリートビューは、トヨタ自動車本社工場前の交差点で、多くのトヨタ施設が集まっている。駅としては中心駅の豊田市駅では無く、愛知環状鉄道の三河豊田駅が最寄りだ。トヨタ社員は電車通勤が推奨されており、これが愛知環状鉄道(第3セクター)の黒字に貢献しているという話も聞く。豊田市にはJRが通っていない。
トヨタ自動車は関連企業を含め巨大な企業団を形成しているが、すべての企業が豊田市内に収まっているわけではない。多くの周辺市町は、その恩恵を受けている。
三河地方と尾張地方を
比較してみる
ランキング上位10市町のうち、7市町が三河地方だ。傾向としては三河地方の方が工業が盛んな自治体が多いと言えそうだと考え、以下のとおり愛知県全体の傾向が分かる地図を作成してみた。
やはり三河が有利か
図2は人口当たりとかでは無いため、面積や人口規模が大きい自治体の多い三河地方が有利になる。とはいえ、トヨタ自動車の影響も強く、三河地方の方が製造業が強いことに違いは無さそうだ。
ちなみに、三河地方の山間部を除いて白くなっている自治体は知立市と蒲郡市だ。知立市は市域が狭く、蒲郡市は平地が少ないことが要因だと推測される。
尾張内陸部では小牧市や稲沢市が上位に
尾張地方で色が付いている自治体は少ないが(図2参照)、名古屋港周辺の東海市・知多市・大府市・名古屋市港区に加え、内陸部でも小牧市・春日井市・稲沢市・一宮市に色が付いている。
小牧市は、日本の大動脈東名神高速(さらに中央自動車道、名古屋高速)のICがある立地を生かし、積極的に工場誘致を行った成果がでているようである。
愛知県で工場が多いスポット
臨海部の工業地帯は、夜景を楽しめる。東海地方では四日市工業地帯の夜景が有名だが、名港トリトンからの夜景も捨てがたい。
三河地方
豊橋市・田原市の臨海部
トヨタ自動車の田原工場があり、県道2号をドライブ中に気になる地域。田原市の蔵王山展望台からは、この工業地帯を一望でき、愛知県内でも有数の夜景スポットとなっている。
西尾市・安城市の国道23号沿い
国道23号バイパスをよく利用する人であればご存じであろう、アイシン※1工場が建っている場所。
※ 日本の自動車部品、エネルギー・住生活関連製品の大手メーカー(アイシン – Wikipediaより)
豊田市・安城市の市境付近
伊勢湾岸自動車道のICが近くにあり、交通の便が良い地域。刈谷ハイウェイオアシスに近いことから、通ったことがある人も多いはず。デンソーも、アイシンと同じく刈谷市に本社を置く自動車部品メーカーだが、刈谷市凄いなと毎回思ってしまう。
尾張地方
東海市・知多市の臨海部
知多半島の西沿岸であり、名古屋港の一部。埋め立てで作られた陸地に多くの工場が建っている。この部分を通る国道155号・247号は産業道路と呼ばれる自動車専用道で、東海JCから新舞子まで、信号無しで車を走らせることが可能。
小牧市の東名高速付近
隣の春日井市にも工業団地があり、内陸部の工業団地となっている。
※この記事の参考とした資料(平成28年経済センサス活動調査)
まとめ・感想
名古屋市を除けば、製造品出荷額ランキングの上位は三河地方の自治体が多くを占めていた。日本一の大企業、トヨタ自動車の存在感は物凄い。
三河地方にはデンソーやアイシン等大企業の工場が各地にある。財政指数ランキングでも上位に三河地方の自治体が多くランクインするのも納得だ。
また、名古屋市の港区を除く各区や尾張東部の自治体(長久手市・尾張旭市・日進市など)は、人口は多いが製造品出荷額は少ない。あらためて、「住む」街なんだと実感する。
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