愛知県市町村 昼夜間人口比ランキングから考察してみよう

都市の役割や傾向を分析するとき、よく用いられる指標が昼夜間人口比率。今回は、2020年の国勢調査データから、愛知県内の比率上位を見て分析してみたい。上位自治体には、職場や商業施設が集まる都市が並ぶ。人口の流入が多い=昼間に“働きに来る”人が多い地域だ。
参考:昼夜間人口比とは?
昼夜間人口比とは、夜間(通常の住民登録人口)に対して、昼間の在勤・在学人口がどれほど多いかを示す指標。
100%を超えると「昼間に人が集まる街」、逆に100%未満だと「外に出ていく街(主にベッドタウン)」という見方ができる。
ランキング上位を紹介
第1位:飛島村
昼夜間人口比:432.1%
全国順位:第1位

堂々の全国1位。
昼間の人口が夜間の4倍以上となる驚異的な数値は、クイズの題材にもよく扱われるほど。村の多くが名古屋港の一部であり、工業地帯として企業が密集していて、製造業・物流・倉庫業など、工場や事業所が集中している。比率が大きくなる原因は、そもそも村で人口が少ないことが影響していると思われる。財政力指数といい、昼夜間人口比といい、全国レベルで非常に尖った自治体と言える。
第2位:東海市
昼夜間人口比:138.9%
全国順位:第18位

名古屋港の臨海部に立地し、日本製鉄の名古屋製鉄所などが立地する工業都市。
住民よりも多くの人が昼間に流入しているのは、工業地帯に加え、駅周辺の再開発で事業所や大学、商業施設なども増えているため。名古屋市南部と隣接しており、名鉄河和線・常滑線など交通アクセスにも恵まれている。1位の飛島村はかなり特殊であるため、個人的には実質的な1位は東海市だと感じている。人口は10万人を超える立派な自治体。
第3位:刈谷市
昼夜間人口比:128.5%
全国順位:第30位

デンソーやアイシンといったトヨタグループの中核企業が拠点を構える刈谷市。
市外から多くの社員が通勤しており、その数が夜間人口を大きく上回っている。駅前には大企業のビルが立ち並び、昼間の賑わいは中核市以上の規模感がある。全国的に知名度が高く豊田市に次ぐ大都市くらいに思われている節もあるが、実際の人口は約15万程度。
財政力でも上位で、かなりイメージの良い都市とされている気がする。JR東海の特別快速が停車する刈谷駅は、愛知県内でも屈指の乗降者数を誇る。弱点を挙げるとすれば、広い道路が少なく渋滞が頻発するところだろうか。
第4位:名古屋市
昼夜間人口比:116.1%
全国順位:第52位

中部地方の中心都市が当然のランクイン。ただし意外にも全国順位は52位。合併で、緑区や天白区など、現在もベッドタウンとして発展を遂げているエリアが市域に組み込まれていることが昼夜間人口比率を抑えているのだろう。それでも区別に見ると、名駅・栄を抱える中村区・中区などは非常に高い数値を記録しており、都市中枢の存在感は圧倒的。地下鉄網に支えられた「通勤都市」としての機能は県内、中部地方随一。
第5位:岡崎市
昼夜間人口比:109.2%
全国順位:第93位

トヨタグループの製造業が進出し、工業都市としての色合いが強い岡崎市。
かつての城下町から、製造・流通を中心とした働く都市へと変貌している。特に市北部のテクノロジーセンターや南部の工業団地では企業の集積が進んでおり、昼間に働きに来る人が多い。名鉄とJRが交差し、アクセス性も良好であることから、実は近年名古屋都市圏に組み込まれ、独自の都市圏を失っている。
第6位以下
6位は豊田市(107.3%)、7位は安城市(106.2%)と、西三河の工業都市が続く。
知立市(102.8%)、碧南市(102.4%)なども続いており、「住むよりも働きに来る人が多い街」が、財政の豊かさともリンクしているように見える。
反対に、昼夜間人口比が100%を下回る自治体は、「ベッドタウン」型のまちづくりが進んでいることを意味している。岩倉市や大治町あたりが、昼間人口が大きく減るエリア。交通利便性から、知立市はベッドタウンとして昼間人口が100%を切りそうなイメージがあったが、逆に比率の高い自治体ランキングに入ってい意外だった。

Comments