伊那市や飯田市は衰退しているのか。南信地域の3都市を比較して状況を確認してみる。
長野県の天竜川沿いに位置する飯田市、伊那市、駒ヶ根市について分析してみる。これらの都市が位置する南信地域は、過疎化が進む地域だ。近年、飯田市や伊那市は衰退が進んでいると言われる。実際の人口推移を確認してみながら、それぞれの自治体における衰退の特徴を考えてみたい。
自治体人口の推移
1980年度からの国勢調査のデータを用いて、3市の人口推移をグラフで表してみる。
特徴的なのは飯田市で、伊那市や駒ヶ根市と比べると規模の大きな自治体であるため、人口は多い。長らく長野市、松本市、上田市に次ぐ人口規模を誇る自治体であり、2015年度調査までは10万都市であった。飯田市は2000年代に入り、急激に人口減少が進んでいる。
人口減少が比較的緩やかなのは駒ヶ根市で、規模としては5万人に満たない都市であるが、2020年時点で1980年とほぼ同じ人口を保っている。伊那市も駒ヶ根市と同様の傾向が見られ、飯田市のみ1980年と比べた際の人口減少が目立つ。
15歳未満人口の推移
続いて、子どもの数に注目してみる。1980年度からの15歳未満人口をグラフで表してみる。
やはり、ここでも飯田市の人口減少が目立つ。ただし、全世代人口と比べれば、伊那市や駒ヶ根市も人口減少の傾向が顕著だ。
人口集中地区人口の推移
次に、各自治体の中でも、より都市化されていると言える地域、人口集中地区の人口(以下、DID人口)に絞って推移をみてみる。
飯田市の推移が興味深い。1995年まで、急激にDID人口が増加、その後は減少を続けている。DID人口の急激な増加を経験している間、自治体人口自体はほぼ横ばいであることから、中心部への移住が進んだ、人口集中地区が広がった、もしくはその両方が起きたと考えられる。
反対に伊那市は、自治体人口が増加している間にもDID人口は緩やかに減少している。これは、中心部の衰退がもろに影響している可能性が高い。
伊那市は2020年度のDID人口が約10千人であるのに対し、自治体人口は約70千人。自治体人口に占めるDID人口割合が飯田市や駒ヶ根市と比べて低い。
駒ヶ根市は衰退してない?
自治体人口やDID人口を見れば、駒ヶ根市は飯田市や伊那市に比べれば衰退していないと考えられる。過去には伊那都市圏に組み込まれていたこともあり、ベッドタウン的なイメージを持つ人もいるかもしれないが、駒ヶ根市の昼夜間人口比率は伊那市より高く、飯田市とほぼ同等だ。個人的には観光都市として伊那市や飯田市以上に成功している印象を受ける。人口でこそ市制後に4万人を超えたことは無いが、大変面白い都市だ。
伊那市の衰退が心配
伊那市はDID人口が10千人を切ったため、これまで定義されていた伊那都市圏は消滅した。これまでの伊那都市圏は、飯田都市圏を上回る人口規模であった。なお、駒ヶ根市も、伊那都市圏の一部だった。
街道沿いに広がるアーケードは立派だが、シャッターを閉めた店舗が目立つ。これは政令指定都市以外の都市圏ではよく見られる光景ではあるが、飯田市と比べると元々の中心市街地の規模が小さい。はるか昔には、飲み屋数が多いことで有名だったようで、旧市役所跡を歩くと、その名残を示す看板がいくつか設置されている。実際に伊那市を散策してみたが、現在は市役所付近の郊外店舗が発展し、駅前中心地の賑わいはほぼ完全に失われてしまったと言えそうだ。
飯田市も国道153号(アップルロード)沿いの郊外で似た傾向はあるが、まだ中心繁華街の飲み屋などに人がおり、夜は多少の賑わいがあった。
飯田市にリニア中央新幹線の駅ができるが、それによって飯田市や伊那市が勢いを取り戻す契機となるか。
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