四日市、津に次ぐ都市はどこか。三重県第3の都市を都市規模と拠点性から分析してみよう。
三重県の県庁所在地は津市だが、四日市市の方が栄えていると言われることが多い。実際、さまざまなデータを見ても、四日市市が優れている点が多いのは確かだ。しかし、だからといって津市が小さい都市というわけではない。中規模都市が多い三重県において、津市は四日市市に次ぐ重要な都市であることは揺るがない。では、この2都市に続く第3の都市はどこか。伊勢市、鈴鹿市、松阪市、桑名市など、知名度の高い自治体が多い三重県。今回は、都市規模と拠点性から第3の都市を分析する。
自治体と人口を確認
まずは、県内すべての自治体と、人口を確認してみる。今回使用する数値はすべて令和2年国勢調査を使用している。
番号 | 自治体 | 総人口(人) |
---|---|---|
1 | 津市 | 274,537 |
2 | 四日市市 | 305,424 |
3 | 伊勢市 | 122,765 |
4 | 松阪市 | 159,145 |
5 | 桑名市 | 138,613 |
6 | 鈴鹿市 | 195,670 |
7 | 名張市 | 76,387 |
8 | 尾鷲市 | 16,252 |
9 | 亀山市 | 49,835 |
10 | 鳥羽市 | 17,525 |
11 | 熊野市 | 15,965 |
12 | いなべ市 | 44,973 |
13 | 志摩市 | 46,057 |
14 | 伊賀市 | 88,766 |
15 | 木曽岬町 | 6,023 |
16 | 東員町 | 25,784 |
17 | 菰野町 | 40,559 |
18 | 朝日町 | 11,021 |
19 | 川越町 | 15,123 |
20 | 多気町 | 14,021 |
21 | 明和町 | 22,445 |
22 | 大台町 | 8,668 |
23 | 玉城町 | 15,041 |
24 | 度会町 | 7,847 |
25 | 大紀町 | 7,815 |
26 | 南伊勢町 | 10,989 |
27 | 紀北町 | 14,604 |
28 | 御浜町 | 8,079 |
29 | 紀宝町 | 10,321 |
総人口では、四日市市、津市に次いで鈴鹿市が3位となっている。松阪市、桑名市、伊勢市がそれに続く。伊賀市以降は人口10万人を切るが、それでも約9万人の人口を抱えている。岐阜県は10万人都市は4自治体しかないため、三重県は中規模の自治体が多いと言えそうだ。
人口だけで考えれば、三重県の三大都市は四日市・津・鈴鹿となりそうだが、そう簡単な話ではない。三重県は平成の大合併で自治体の再編が進んだ。主要都市はかなり広大な市域を抱えるようになり、「都市」としての実態を、単純な自治体人口から読み取れるかは疑問だ。
人口集中地区の順位は
人口集中地区(DID)は、国勢調査に基づいて定義される、特定の地域に一定以上の人口が集中している地区のこと。日本では、原則として人口密度が1平方キロメートルあたり4,000人以上で、連続する人口集中エリアが対象となる。都市部やその周辺に多く、インフラや公共サービスの整備状況を把握するための指標としても用いられる。
番号 | 自治体 | 人口集中地区人口(人) |
---|---|---|
1 | 津市 | 137,562 |
2 | 四日市市 | 205,948 |
3 | 伊勢市 | 54,923 |
4 | 松阪市 | 74,258 |
5 | 桑名市 | 74,955 |
6 | 鈴鹿市 | 111,739 |
7 | 名張市 | 42,957 |
8 | 尾鷲市 | 8,540 |
9 | 亀山市 | 6,256 |
10 | 鳥羽市 | ー |
11 | 熊野市 | ー |
12 | いなべ市 | ー |
13 | 志摩市 | ー |
14 | 伊賀市 | 21,409 |
15 | 木曽岬町 | ー |
16 | 東員町 | 11,887 |
17 | 菰野町 | 14,437 |
18 | 朝日町 | ー |
19 | 川越町 | 9,193 |
20 | 多気町 | ー |
21 | 明和町 | ー |
22 | 大台町 | ー |
23 | 玉城町 | ー |
24 | 度会町 | ー |
25 | 大紀町 | ー |
26 | 南伊勢町 | ー |
27 | 紀北町 | ー |
28 | 御浜町 | ー |
29 | 紀宝町 | ー |
人口密度が1平方キロメートルあたり4,000人以上で、連続する人口集中エリアが対象となるため、そもそも要件を満たさず、人口集中地区を持たない市もある。反対に、町であっても人口集中地区が設定されている自治体もある。三重県の場合は、菰野町の人口集中地区人口が、尾鷲市や亀山市よりも多くなっている。
ここで人口集中地区を持たない自治体は、第3都市の候補とすることは難しいだろう。この時点で候補は限られてきており、鈴鹿市が有力であることは変わらない。次は、拠点性をみていきたい。
昼間人口比率で拠点性を確認する
都市の拠点性をみる場合に、昼間人口比率が用いられることが多い。昼間人口が減る自治体は、通勤や通学で人口が流出する自治体であり、都市活動のための人口を供給する側、ベッドタウン的側面の強い自治体だと推測される。都市圏の中心となる自治体は、多くの場合に昼間人口が増加する。日本三大都市が東京・横浜・大阪でないのは、この視点が重要視されているからだといえよう。
さて、三重県の自治体を昼夜間人口比率で見るとどうなるのか。国勢調査のデータを見ると、以下のようになった。
番号 | 自治体 | 昼夜間人口比率(%) |
---|---|---|
1 | 津市 | 102.8 |
2 | 四日市市 | 104.7 |
3 | 伊勢市 | 100.2 |
4 | 松阪市 | 95.7 |
5 | 桑名市 | 92.8 |
6 | 鈴鹿市 | 94.6 |
7 | 名張市 | 88.4 |
8 | 尾鷲市 | 103 |
9 | 亀山市 | 99.9 |
10 | 鳥羽市 | 106 |
11 | 熊野市 | 101.8 |
12 | いなべ市 | 110.4 |
13 | 志摩市 | 93.4 |
14 | 伊賀市 | 106.9 |
15 | 木曽岬町 | 95.2 |
16 | 東員町 | 87 |
17 | 菰野町 | 84.6 |
18 | 朝日町 | 83.2 |
19 | 川越町 | 95.2 |
20 | 多気町 | 104.5 |
21 | 明和町 | 88.3 |
22 | 大台町 | 96 |
23 | 玉城町 | 96.5 |
24 | 度会町 | 78.3 |
25 | 大紀町 | 90.2 |
26 | 南伊勢町 | 94.3 |
27 | 紀北町 | 96.7 |
28 | 御浜町 | 95.7 |
29 | 紀宝町 | 87.2 |
最大都市の四日市市と、県庁所在地の津市は、昼間人口が増加している。しかし、それ以外の10万都市は、どこも昼間人口が減少している。
規模と拠点性で分析してみる
それでは、人口集中地区人口で確認した都市規模と、昼夜間人口比率で確認した拠点性の両方を使用して都市の特徴・傾向を分析していきたい。今回は、以下のとおりグラフを作成した。
分布グラフを見たときに、四日市市と津市が突出しており、県内における2都市の地位は揺るがないことが読み取れる。それに続く都市はどこか。都市の規模を重視するのであれば鈴鹿市、拠点性を重視するのであれば伊賀市、バランスを重視するのであれば伊勢市となるだろう。グラフからも分かるように、松阪市や桑名市を選ぶのであれば、同じ傾向の都市である鈴鹿市が優先して選ばれるはずである。よって、候補は鈴鹿市・伊賀市・伊勢市に絞られる。
迷う場合、私はよく歴史を確認する。それぞれの市制移行年は、鈴鹿市は1942年、伊賀市(旧上野市)は1941年、伊勢市(旧宇治山田市)は1906年であった。歴史的には、圧倒的に伊勢市が優勢となる。
また、地理的な位置関係を見てみる。四日市・津・鈴鹿では、三重県全体で見たときに、あまりに北部地域に偏りすぎている。県全体でのバランスを考えるのであれば、伊勢市か伊賀市が望ましいだろう。(尾鷲市などはあまりに都市規模が小さすぎるため除外)
結果、三重県3大都市を問われた場合、筆者は四日市市・津市・伊勢市と答える。
過去には百貨店も営業していた伊勢市。現在、県内には津市と四日市市のみ百貨店が存在する。都市規模は四日市市や津市に比べるとかなり小さくなるが、それでも三重県における伊勢市の存在感は大きく、実際に駅前はかなり栄えた景観となっている。観光で伊勢を訪れる際、伊勢神宮だけでなく是非駅前など中心部に行ってみてほしい。
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