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長野県における行政上の拠点都市は、どれほど拠点性があるのか

長野県をいくつかの地域に分ける場合、10の地域に分類される。それぞれの地域には、県の行政機関である地域振興局が設置されているが、その場所に注目したい。一般的には、こういった行政機関の支庁は地域における拠点性を持った中心都市に置かれる場合が多い。ただし、長野県は大変広く、全国4位の面積を誇る。そのため、果たして地域振興局の設置されているすべての都市が、拠点性と規模を備えた都市であるのか、気になったので調べてみた。

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長野県の地域拠点都市

地域区分と地域振興局が設置されている都市は以下のとおり。

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 名称位置所管区域
1佐久地域振興局佐久市小諸市、佐久市、北佐久郡、南佐久郡
2上田地域振興局上田市上田市、東御市、小県郡
3諏訪地域振興局諏訪市岡谷市、諏訪市、茅野市、諏訪郡
4上伊那地域振興局伊那市伊那市、駒ヶ根市、上伊那郡
5南信州地域振興局飯田市飯田市、下伊那郡
6木曽地域振興局木曽町木曽郡
7松本地域振興局松本市松本市、塩尻市、安曇野市、東筑摩郡
8北アルプス地域振興局大町市大町市、北安曇郡
9長野地域振興局長野市長野市、須坂市、千曲市、上水内郡、上高井郡、埴科郡
10北信地域振興局中野市中野市、飯山市、下水内郡、下高井郡

唯一、木曽地域の振興局だけは市ではなく町に置かれている。木曽地域は町村で構成されており、町ではあるが木曽町(旧木曽福島町)は歴史的にも地域の中心的な街だった。

所管区域の自治体は、市制施行順になっているから、佐久市と諏訪市、木曽町以外は、地域で最初に市制を施行したことになる。

昼夜間人口比率と人口規模で市を分析

拠点性で都市を見る場合、昼夜間人口比率という指標が用いられることが多い。拠点性が高い都市は、通勤・通学等の需要で昼間人口が増加する傾向にある。ただし、昼間人口が多ければ必ずしも拠点性が高いと言えるかは、微妙なところだ。人口が少なめの町に大きな工場がある場合など、極端に昼夜間人口比率が高くなる場合がある。人口規模が大きな都市で、さらに昼間人口が増加するような都市こそ、まさに拠点性が高い地域経済を牽引する拠点都市だと言えるため、今回は昼夜間人口比率と自治体人口を合わせて分析していきたい。

2020年国勢調査より筆者作成

横軸に人口、縦軸に昼夜間人口比率を設定し、分布図を作成した。赤字が地域振興局が設置されている市である。まず、長野市、松本市に加えて上田市は他の様々な市と比べても突出した存在であることが伺える。図上で言えば右上にいくほど拠点性は高い。よって、長野県の三大都市を選ぶのであれば、この3市が相応しいだろう。

次に注目したいのは飯田市。南信の中心都市ともいえる自治体であるが、都市圏人口を比較した場合には上田市、佐久市、諏訪市、伊那市(近年は消滅)よりも少なくなっている。それにも関わらず、人口規模と昼間人口比率でみた場合には、かなりの拠点性を持つという結果となった。筆者は小学生時代に読んでいた地図帳で、長野県は長野市、松本市、上田市、飯田市が大都市だと考えていたので不思議ではないのだが、一般的にはどう捉えられるだろうか。

他に拠点性の高さが読み取れる都市として諏訪市に注目したい。人口規模こそ少ないが、昼間人口が多く、諏訪地域の中心都市であることに疑いの余地はないだろう。松本市を超え、県内の市ではトップの昼夜間人口比率となっている。

拠点性の低い都市にも注目してみる。図から読み取ると、安曇野市、千曲市、東御市の拠点性が低いようだ。これらの都市は隣の大都市(松本市、長野市、上田市)の都市圏に組み込まれており、都市活動を活発に行われるための昼間人口を供給する側の都市となっている。

歴史と拠点性の関係は

次に、拠点性が高い都市が昔から発展していたのかを見ていきたい。戦前の自治体人口を用いても良かったが、今回は市制を施行した年で分布図を作成した。

市制施行年といっても、その自治体内において初めて市が誕生した年を採用している。すなわち、例えば千曲市であれば更埴市が市制移行した時点となる。

結果は以下のとおり。

1950年代に飯山市や伊那市、駒ヶ根市が誕生して以降に市制を施行した市は、すべて昼間人口が減少する自治体であり、拠点性が高いとはいえない。

こちらの結果をみても3大都市+飯田市という都市の拠点性が読み取れる。単純な人口規模を省いているため、先ほどよりも諏訪市の存在感が大きくなっている。

都市の施策や方向性を決める上で、その都市の特徴を押さえることは重要だ。今回は長野県の都市を拠点性で分析した。拠点性の高い都市は、地域全体を牽引する役割が期待される。現在は4番手となっている飯田市も、リニア中央新幹線の長野県駅が設置されることを念頭に、南信地方全体へと開業効果を波及させていけるような、より拠点性を高めた街づくりを期待したい。

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